脂忘録 ~しぼうろく~

人に言うほどのコトでもない徒然

烈海王はダチなんだ

渋川センセイが、宮本武蔵をぶん殴った時、涙が出そうになった。

コンビニに行くと、本屋に寄ると、必ず読んでしまう。一度読んでいる週も、2回目3回目と、筋を知ってて読んでしまう。

主人公刃牙(バキ)が、全然グラップラーじゃなくなり、カタカナでいよいよ現実離れして、親子喧嘩がファンタジーになり、今の刃牙道。

中でも烈海王は、ヤバい。
ピクルに食べられちゃった辺りから、ホントに目が離せなくなって。格闘マンガで、負けたら食べられるって、ホラーじゃ無いんだから。

作者自身にも、烈には特別な思い入れがある様で、新日本に新外人が来る度に、ボリスマンとして最初に当てられてた、藤原組長並みの働きを強いられている。
で、やっぱり主人公の露払いだから、やられちゃうんだよね。そこも組長的な。

そんな烈海王が、現代に甦った宮本武蔵と戦い、両断されてしまった。段々インフレして行く物語だから、登場人物には、どんどん苛烈な試練が、課せられる。今回、とうとう主人公に近い役割の彼が、死んでしまった。救済措置は、今のところ描かれていない。

そんな憎っくき武蔵を、いとも簡単に「転がし」、ぶん殴ってくれたのが、合気道の生ける伝説、渋川剛気センセイ。そしてタイトルの台詞だ。烈さんが斬られても、鎬紅葉の超絶医学で蘇ってくるんじゃないか。そんな望みも、話が進むにつれ、儚くなって行く中での、この展開だ。

よくやってくれた。本当に涙が出そうだった。今後の展開として、このままでは済むまい。順番的にも、やられちゃう可能性大。武蔵には、刃物でパワーアップというオプションがあるし。ここは一つ「刃物なんて持たれちゃ敵わん」と、飄々と逃げて欲しい。それができるキャラだし。

これ以上、武蔵の価値を高める三段論法に、大切な登場人物を失わないで欲しい。と、切に願う。

絵が巧くても、マンガが下手な人はいる。
下らなさこそ、マンガで、表現すべき事だ。
いしかわじゅんの、この2つの言葉には、頷かざるを得ない。

第一部から、第四部に至り、初めは格闘マンガだったものが、どんどん荒唐無稽になり、物語として、下らなくなる程に、面白く、目が離せなくなっていった。

こうして文字にすると、なんてヘンテコな話かと。そこに説得力を与え、支えているのが、超個性的なキャラクター。「アイツなら、遣りかねない。」どんなにブッ飛んだ展開でも、登場人物の知り合いである僕達は、賞賛と共に受け入れるのだ。

今見れば、初期の絵は、随分下手くそで、でもやっぱり読み始めれば、BOOK・OFFの閉店時間にワープしてたりして。知っている筈の筋を、何度も反芻し、毎週の展開からも目が話せない。刃牙シリーズは、巧いのではない、マンガとして、強いのだ。

鎬昂昇辺りが、武蔵をくしゃっと言わせてくれると、最高なんだけど。
そしてやっぱり、まだ烈海王の死は、信じていない。何たってアタマを撃たれたのに生きてる、花山薫が居るんだから。